よくある誤解 vs 正しい理解
| 誤解 | 正しい理解 |
|---|---|
| 深く吸えないのは「吸う力が弱い」から | 吸う準備ができていないだけ |
| もっとたくさん吸おうとすれば深くなる | 通り道を整えた結果、深くなる |
| 呼吸は努力で“入れる”もの | 呼吸は準備で“通す”もの |
深呼吸が苦しいのは、能力の問題ではありません。
吸うための“準備”がまだ整っていないだけなんです。
実践チェックリスト
次のうち、あなたはいくつ当てはまりますか?
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深呼吸しようとすると、肩がすぐ上がってしまう
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吸っても吸っても、お腹や背中まで空気が届かない
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息を吸うと胸がつまるような感覚がある
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長く吸おうとすると、首や喉に力が入る
ひとつでも当てはまるなら、“吸う準備”を整えるタイミングです。
吸う準備は2つある
呼吸が深くなるためには、「筋力」でも「根性」でもなく、“準備”が必要です。
準備には2つの段階があります。
1️⃣ 呼吸しやすい状況をつくること(外の準備)
2️⃣ 呼吸しきれる感覚をつくること(内の準備)
この2つがそろってはじめて、“通る呼吸”が自然に生まれます。
外の準備|呼吸しやすい状況をつくる
呼吸に関わる筋肉は、首や肋骨まわりにあります。
つまり、“呼吸しやすい状況”とは、肋骨や首が動きやすい状態のことです。
肋骨を開く(側屈ストレッチ)

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片腕を上げて、反対側にゆっくり倒れる
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足で押した力で、肋骨の下側を“下から突き上げる”ように意識
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30秒キープ → 左右交互に行う
💡余裕がある人は、
吸う息で肋骨の下側を広げ、吐く息で身体を地面に預けるように3〜5呼吸。
→ わき腹の奥に空気が入る感覚があればOK。
首の前をゆるめる(鎖骨ストレッチ)

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両手を鎖骨の下(肋骨上部)に添える
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軽くあごを上げ、目線は鼻先へ
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あごと鎖骨の距離を“長く”するイメージでゆっくり伸ばす
💡首の前側(胸鎖乳突筋)がやわらぐと、鎖骨が自由に動き、
吸気の“入り口”が自然に広がります。
内の準備|呼吸しきれる感覚をつくる
身体の通りが整ったら、次は内側の感覚です。
いくら形が整っても、“受け取る意識”が準備できていなければ、呼吸は途中で止まります。
そこで行うのが──ヴィローマ呼吸です。
ヴィローマ呼吸(Viloma Pranayama)
「ヴィ(逆)」+「ローマ(流れ)」
= 通常の呼吸の流れにあえて逆らって行う呼吸法。
あえて制限をかけた動きを行うことで、筋肉と感覚の発達を促す。
筋トレと同じイメージです。
負荷をかけることで、少しずつ通り道を慣らす呼吸です。
💡 方法
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吸って、止めて、吸って、止めて、吸って、ひと息で吐く
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これを数回繰り返す
※単に分割して吸っているわけではなく、3回とも全力で吸うこと。
ただし、吸いきれなくてもOK。
「吸えないながらも吸おうとする」ことがポイントです。
👉 壁を押すトレーニングと同じで、
壁が動かなくても押す力を入れ続けることで、感覚と筋力が育ちます。
🌬 吸うとは、“迎え入れる”こと
呼吸を深めるとは、空気を取りに行くことではなく、
空気が自然に入ってこられるようにすること。
外の準備で「通り道」を整え、
内の準備で「受け入れる感覚」を育てる。
それが、「通す呼吸」の本質です。
🎥 関連動画リンク
📺 YouTube|深呼吸が苦しい人へ──“吸う力”より“吸う準備”を整えよう|呼吸の誤解④
00:00|オープニング
00:11|準備の大切さについて
01:37|外側の準備【肋骨・首のストレッチ】
05:32|内側の準備【ヴィローマ呼吸】
08:52|まとめ
練習のヒントとなるヨガの教え
吸おうとする努力をやめて、
空気を迎え入れる準備をする。呼吸は「がんばる動作」ではなく、
「心地よい状態」なんです。
それに相応しい自分になった時、それは向こうからやってくる
🧭 よくある質問(Q&A)
Q. ヴィローマ呼吸は毎日やった方がいい?
A. はい、1日1〜2分で十分です。まずは感覚の違いを知ること、コツをつかむことが大切です。時間も手間もとらないので、信号待ちなどの時間に練習するのもおすすめです。
Q. めまいがする場合は?
A. 途中で止めて構いません。息を整えてから再開してください。吸い込む量ではなく、感覚の深まりが目的です。
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・身体の使い方を、誤解から再教育する。──年間noteシリーズのご案内
あなたへの問い
あなたはいま、
吸おうとしていますか?
それとも──吸える準備を、していますか?