深呼吸が苦しいのは、“吸う力”ではなく“吸う準備”が足りないから|呼吸の誤解④

よくある誤解 vs 正しい理解

誤解 正しい理解
深く吸えないのは「吸う力が弱い」から 吸う準備ができていないだけ
もっとたくさん吸おうとすれば深くなる 通り道を整えた結果、深くなる
呼吸は努力で“入れる”もの 呼吸は準備で“通す”もの

深呼吸が苦しいのは、能力の問題ではありません。
吸うための“準備”がまだ整っていないだけなんです。


実践チェックリスト

次のうち、あなたはいくつ当てはまりますか?

  • 深呼吸しようとすると、肩がすぐ上がってしまう

  • 吸っても吸っても、お腹や背中まで空気が届かない

  • 息を吸うと胸がつまるような感覚がある

  • 長く吸おうとすると、首や喉に力が入る

ひとつでも当てはまるなら、“吸う準備”を整えるタイミングです。


 吸う準備は2つある

呼吸が深くなるためには、「筋力」でも「根性」でもなく、“準備”が必要です。
準備には2つの段階があります。

1️⃣ 呼吸しやすい状況をつくること(外の準備)
2️⃣ 呼吸しきれる感覚をつくること(内の準備)

この2つがそろってはじめて、“通る呼吸”が自然に生まれます。


外の準備|呼吸しやすい状況をつくる

呼吸に関わる筋肉は、首や肋骨まわりにあります。
つまり、“呼吸しやすい状況”とは、肋骨や首が動きやすい状態のことです。


肋骨を開く(側屈ストレッチ)

  1. 片腕を上げて、反対側にゆっくり倒れる

  2. 足で押した力で、肋骨の下側を“下から突き上げる”ように意識

  3. 30秒キープ → 左右交互に行う

💡余裕がある人は、
吸う息で肋骨の下側を広げ、吐く息で身体を地面に預けるように3〜5呼吸。
わき腹の奥に空気が入る感覚があればOK。


首の前をゆるめる(鎖骨ストレッチ)

  1. 両手を鎖骨の下(肋骨上部)に添える

  2. 軽くあごを上げ、目線は鼻先へ

  3. あごと鎖骨の距離を“長く”するイメージでゆっくり伸ばす

💡首の前側(胸鎖乳突筋)がやわらぐと、鎖骨が自由に動き、
吸気の“入り口”が自然に広がります。


 内の準備|呼吸しきれる感覚をつくる

身体の通りが整ったら、次は内側の感覚です。
いくら形が整っても、“受け取る意識”が準備できていなければ、呼吸は途中で止まります。

そこで行うのが──ヴィローマ呼吸です。


ヴィローマ呼吸(Viloma Pranayama)

「ヴィ(逆)」+「ローマ(流れ)」
= 通常の呼吸の流れにあえて逆らって行う呼吸法。

あえて制限をかけた動きを行うことで、筋肉と感覚の発達を促す。
筋トレと同じイメージです。

負荷をかけることで、少しずつ通り道を慣らす呼吸です。


💡 方法

  1. 吸って、止めて、吸って、止めて、吸って、ひと息で吐く

  2. これを数回繰り返す

※単に分割して吸っているわけではなく、3回とも全力で吸うこと。

ただし、吸いきれなくてもOK。
「吸えないながらも吸おうとする」ことがポイントです。

👉 壁を押すトレーニングと同じで、
壁が動かなくても押す力を入れ続けることで、感覚と筋力が育ちます。


🌬 吸うとは、“迎え入れる”こと

呼吸を深めるとは、空気を取りに行くことではなく、
空気が自然に入ってこられるようにすること。

外の準備で「通り道」を整え、
内の準備で「受け入れる感覚」を育てる。

それが、「通す呼吸」の本質です。


🎥 関連動画リンク

📺 YouTube|深呼吸が苦しい人へ──“吸う力”より“吸う準備”を整えよう|呼吸の誤解④

00:00|オープニング

00:11|準備の大切さについて

01:37|外側の準備【肋骨・首のストレッチ】

05:32|内側の準備【ヴィローマ呼吸】

08:52|まとめ


練習のヒントとなるヨガの教え

吸おうとする努力をやめて、
空気を迎え入れる準備をする。

呼吸は「がんばる動作」ではなく、
「心地よい状態」なんです。

それに相応しい自分になった時、それは向こうからやってくる


🧭 よくある質問(Q&A)

Q. ヴィローマ呼吸は毎日やった方がいい?
A. はい、1日1〜2分で十分です。まずは感覚の違いを知ること、コツをつかむことが大切です。時間も手間もとらないので、信号待ちなどの時間に練習するのもおすすめです。

Q. めまいがする場合は?
A. 途中で止めて構いません。息を整えてから再開してください。吸い込む量ではなく、感覚の深まりが目的です。


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note版|深呼吸が苦しいのは、“吸う力”ではなく“吸う準備”が足りないから

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あなたへの問い

あなたはいま、
吸おうとしていますか?
それとも──吸える準備を、していますか?

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